中国外務省は、高市首相が韓国で開かれたAPEC=アジア太平洋経済協力会議に出席した際、台湾の代表と会談したことについて、「日本側に強く抗議した」と明らかにしました。
高市首相は1日、韓国でAPECに台湾の代表として参加した林信義・総統府顧問と会談しました。
また、高市首相は林氏と握手する写真をX(旧ツイッター)に投稿し、「日台の実務協力が深まることを期待しています」とコメントしています。
高市首相の投稿を受けて、中国外務省は「ソーシャルメディアで大きく取り上げた行為は、台湾独立勢力に誤ったメッセージを送るものであり、極めて悪質だ」と批判しました。
さらに、中国外務省は「日本側に強く抗議した」と明らかにし、台湾問題について「中国の内政であり、決して越えてはならないレッドラインだ」と強調しました。
これを受け、「なんで日本の首相が台湾代表との写真をSNSに乗せるのがいけないのか」について疑問の声が多く上がっているようです。
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高市首相と台湾代表のX投稿→中国外務省【きわめて悪質】何がいけないの?
11月1日、台湾を代表してAPEC首脳会議に参加している林信義氏とお会いしました。日台の実務協力が深まることを期待します。 pic.twitter.com/AJDUkgMEnu
— 高市早苗 (@takaichi_sanae) November 1, 2025
高市早苗首相は1日、訪問先の韓国・慶州で、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に台湾代表として出席した林信義・元行政院副院長(副首相)と約25分間会談しました。
首相は「台湾は緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人です。幅広い分野で協力と交流をさらに深めていきたい」と述べたと、日本政府が発表しました。
なぜ中国は「極めて悪質」ととらえたのか?
中国側が「極めて悪質」と非難した背景には、長年にわたる「一つの中国」原則をめぐる歴史的経緊張があります。
中国は台湾を自国の一部とみなし、各国が台湾政府高官と公式に接触することを「内政干渉」と捉えてきました。
1972年の日中国交正常化以降、日本も「台湾を国家として承認しない」立場を取っています。
そのため、首相級の会談は極めて異例であり、中国側の強い反発は予想されたものでした。
一方、高市早苗首相には、自民党内での保守的支持層へのアピールと、台湾との連携を通じた安全保障・経済面の結束強化という意図があったとみられます。
高市首相の発言は、民主主義陣営の一員としての日本の立場を明確にする政治的メッセージとも受け取れます。
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なぜ中国は台湾を独立国家として認めていないか?
中国が台湾を独立国家として認めていないのは、「一つの中国」原則に基づく歴史的・政治的な立場に由来します。
1949年、中国の内戦(国共内戦)で中国共産党が勝利し、中華人民共和国が成立しました。
一方で敗れた国民党は台湾へ逃れ、台北を拠点に「中華民国」としての政府を維持しました。
以後、中国本土と台湾は別々の政治体制を歩むことになりますが、中国政府はあくまで「台湾は中国の一部であり、分裂状態にある」と主張し、台湾の独立を国家分裂行為として断固拒否してきました。
1971年に国連が中国の代表権を中華人民共和国に移したことを機に、国際社会でも「一つの中国」原則が広く受け入れられ、台湾は国際機関での地位を失いました。中国はこの原則を外交政策の中核に据え、各国に「台湾を国家として承認しない」ことを求めています。
台湾の独立を認めることは、中国にとって主権と領土の一体性を脅かす問題であり、体制の正当性にも関わる極めて敏感な政治課題なのです。
台湾は民主主義と社会主義の際にある立場
この一連の流れについて、ネットでは、「台湾は社会主義と民主主義のはざまにあり、その台湾に日本の首相が友好的に接したことが中国の強い反発を招いた」との声がありますが、この分析は正しい理解です。
台湾は現在、自由選挙による政権交代が定着した成熟した民主主義国家的体制を持っています。
一方の中国は共産党一党支配による社会主義体制であり、政治的自由や報道の自由が制限されています。
この「体制の違い」こそが、中国にとって台湾問題が単なる領土問題ではなく、「体制の正当性」をめぐる極めて敏感な問題となっている理由です。
つまり、民主主義陣営(とくに日本や米国などの首脳)が台湾に好意的に接近することは、中国にとって「台湾の民主主義を承認し、独立国家として扱う動き」に見えるのです。
首相レベルでの会談は、事実上の「国家間交流」と受け取られかねないため、中国としては一線を越えた行為と認識し、当然強く反発します。
したがって、「台湾は社会主義と民主主義のはざまにあり、その台湾に日本の首相が友好的に接したことが中国の強い反発を招いた」という分析は、歴史的・政治的構造を踏まえた的確な理解といえます。
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